湧き水について

子ども版

★沖縄の湧き水について

 環境省が2024年に実施した「湧水保全に係る状況調査」によると沖縄県の湧水把握件数は1,261件で、多くの湧き水が今も存在していることがわかります。
 その理由は、沖縄の島々の地質と地形にあります。地面の下には、サンゴ礁に由来する琉球石灰岩が広がっています。この層は隙間が多く、水を通しやすいのが特徴です。
 一方、その下に分布する島尻層泥岩は水をほとんど通しません。雨水は、琉球石灰岩のすき間を通って地下へ浸み込み、泥岩の上を流れて、島の低い場所や崖の割れ目などから湧き出します。

湧き水の出るしくみ
湧き水の出るしくみ

 このような自然と風土が生み出した沖縄の湧き水は、大きな山や川の存在しない沖縄の人々の暮らしを支え、島国である沖縄を大きく発展させました。沖縄戦の最中にも多くの命をつなぎ、その恩を忘れない人々が今も感謝の祈りを捧げる場所でもあります。
 上水道が完備された現代においても、沖縄では、かつて飲料水や生活用水、防火用水等につかわれた湧き水が、多く残っています。湧き水は生活だけでなく、歴史や文化、自然や環境においても大きな役割を果たしていると考えます。

★湧き水とは

 広辞苑や大辞林で「わき-みず「涌き水・湧き水」を調べてみると、「わいて出る水」「地中からわいて出る水。ゆうすい」とあります。さらに「井」「井戸」「泉」について調べてみると

「井」とは

  • 泉または流水から用水を汲み取る所。
  • 地を掘り下げて地下水を汲み取る所 。井戸。
  • 井戸。堀り井戸。
  • 泉や地下水をためた水汲み場。

「井戸」とは

  • 用水を得るために、地を掘って地下水を吸い上げ、または汲み取るようにしたもの。
  • 地面を深く堀り、あるいは管を地中に打ち込んで地下水をくみ上げるようにしたもの。

「泉」とは

  • 地中から湧きでる水または湯。また、その場所。

となっています。

★沖縄における湧き水の呼び方

 沖縄では、井戸のことを「カー」、川のことを「カーラ」と呼びます。井戸にはその他に「ガー」、「ジャー」、「ハー」、「ケー」、樋から水が流れ落ちる所を「ヒージャー」等、その呼び方に違いがあります。呼び方にはその地域や前につく言葉によって違いがあるようです。

★沖縄の湧き水にまつわるしきたり

ウブミジ(産水)

 生まれた子どもを浴びせたり、その額にウビナディ(お水撫で)をするために用いるカーミジ(井泉水)。

ワカミジ(若水)

 元旦の早朝、初めて汲む井泉の水のこと。朝早く子どもたちが汲んできた若水を仏壇やヒヌカン(火の神)にお供えして家族の一年間の健康を祈願しました。近所のお年寄りにも汲んで行き、お年玉を貰う習慣がありました。若水によって若返る(再生)意味もあるようです。古くは国王のために、遠くは国頭辺戸の水、近くは浦添や真和志・西原の吉方の井戸水を取り寄せた記録もあります。

ウビナディ(お水撫で)

 カー(井泉)などから水を汲み、中指を浸してその指で額を三回撫でるという魔除けの所作。ミジナディ、ナディミジ、ミジトゥイともよばれます。元旦には子ども達に、生まれた子には健康を祈願し、結婚式には花嫁花婿の額にウビナディをしました。(再生)意味もあるようです。古くは国王のために、遠くは国頭辺戸の水、近くは浦添や真和志・西原の吉方の井戸水を取り寄せた記録もあります。

カーウガミ(カー拝み)

 井戸や泉に据えられた石のウコール(お香炉)を泉井の神として拝むこと。遠祖が使用したとの伝承を有す古井泉を巡拝することもあり、水への感謝や村や一族の健康、繁栄などを祈願します。

★沖縄における災害と湧き水

 災害と水~阪神淡路大震災の復旧支援に参加して~
 平成7年1月17日未明に発生した、 阪神淡路大震災。この大震災に対して、沖縄県から初めて水道復旧支援隊として14人の技術職員が被災地に派遣されました。私も支援隊の一人として、震災から10日後に兵庫県芦屋市に入りました。そこで目にしたものは、道路は寸断され、家屋も破壊、電気、水道、ガスなどのライフラインはズタズタになって、真冬の寒い中、学校や公園で避難生活をしている人々の悲惨な光景でした。
 わが沖縄県は、島々から成り立つ離島県で、災害に見舞われた時、他府県のようにすぐに近隣県から応援や救援物資が届くとは限りません。復帰後、上水道、簡易水道事業等を整理統合し用水供給事業からの受給依存に伴い、北部取水南部消費の中で、もし、このような大規模災害が発生した場合、被害の規模によっては復旧までに月単位の期間を要すると思います。
 沖縄の先人達は、水の有難さを知り、湧き水や井戸を拝所として大事に保存してきた歴史があります。去る沖縄戦では激しい砲火の中、水を求めてさまよい川や湧き水、井戸、ため池の近くでたくさんの犠牲者が出たとの話も聞いています。しかし、近年は水道の普及や地域開発等の影響で湧き水や井戸、ため池等の数が減少して保存状態が劣化していることは残念なことです。
 東日本大震災や熊本地震、能登半島地震などを教訓に、災害時の「水」の確保の手段として、全国的に地域の湧き水及び井戸等の活用が見直されています。生活を偲ぶ重要な文化遺産であると同時に、地域の災害時における備蓄水源として利用できるよう、調査、検証を行い後世へ継承していくべきだと思います。

上間恒信(元県企業局職員)

 東日本大震災後、地域の湧き水が防災・減災にも大きく役立つことが重要視されました。災害時には、飲み水以外にトイレ等の衛生面や火災を消火するための水の確保も重要で、日ごろから地域にある地下水を把握すること、水質を悪化させないための努力が、防災・減災に重要な役割を果たします。
 今のように沖縄本島北部に大きなダムがなかった頃は、各集落に村ガーと呼ばれる共同の湧き水があり、飲料水、生活用水、雑用水、灌溉用水、防火用水として活用され、地域活動の一環として、清掃や管理も行ってきました。当時は、まさに「命の水」の源であり、神聖な場所としてここを拝み、水を絶やさないため、汚さないためのルールを作り、守ってきました。年中行事の中にもこの場所で行われることも多く、そのような機会に子どもたちへ、自然の尊さや水の危険から身を守る方法なども伝えられたように思います。
 現代の私たちも、生活の中で身近な湧き水に親しむ機会を持ち、いざという時のためにも自宅や近所の井戸、湧き水について確認しておくことをお勧めします。

ぐしともこ(湧き水fun倶楽部代表)

参考文献:沖縄大百科事典(1983年)、広辞苑 第七版(2018年)、大辞林 第四版(2019年)、沖縄の水の文化誌 長嶺操(1992年)、沖縄の祭りと年中行事 上江洲均(2008年)、沖縄暮らしの大百科 崎間麗進(2004年)

沖縄(うちなぁ)の湧き水アーカイブ

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